大阪高等裁判所 昭和34年(ラ)159号 決定 1959年6月24日
抗告人 北山ヨシ 外一名
相手方 東源十郎
主文
本件抗告はいずれも之を棄却する。
理由
抗告人等は原決定を取消す本件を大阪地方裁判所に移送するとの決定を求め其の理由とするところは相手方は抗告人等に対し債務不履行による売買契約の解除を原因として原状回復並損害賠償の履行を求める為本訴を相手方の住所地を管轄する神戸地方裁判所に提起したが本来右売買契約の履行地は訴提起当時の相手方の主張態度即ち訴状の記載によつて判断さるべきであるそして相手方の訴状によれば本訴は売買契約に附随する違約損害金を請求するものであつて 右売買契約約款によれば売主即ち抗告人北山の違約の時は買主即ち相手方は催告を要せず契約を解除することができ売主は違約損害として手附金と同額を賠償する定であるから右違約損害金は売買契約に附随し之と別個の債務不履行による損害賠償請求でないこと明である従つて右損害賠償請求訴訟は民法第四八四条により売買契約に因る代金並違約義務者たる抗告人北山の住所地を管轄する大阪地方裁判所の管轄に属するものといわなければならないよつて原決定を取消し抗告人等申立の通り移送の決定あらんこと求めるというにある
よつて按ずるに本件訴状の記載によれば相手方は抗告人北山ヨシとの売買契約が、同抗告人の債務不履行に因り解除となつたので之が原状回復の為売買代金の返還並違約損害金の支払を求めるというにあつて右売買契約の終了を原因とし違約金は売買契約に附随する特約に基ずくものであること明であるけれども既に売買契約が消滅し金銭債務に変更されその弁済をなすべき場所につき別段の意思の認められない本件に於ては我民法の原則に従ひ債権者の住所地を以て履行地と解することを得へく民法第四八四条は債務者の為専属管轄を定めたものではない故に債権者たる相手方は自己の選択により債権者の住所地を管轄する神戸地方裁判所に訴を提起し得べきこと勿論で本件抗告は理由がない
よつて之を棄却すべきものとし主文の通り決定する
(裁判官 藤城虎雄 亀井左取 坂口公男)